抄録
75歳女性。初診の約20年前に心窩部の腫瘤を切除され,その2年後より同部位に腫瘤が再発したが放置していたところ,3ヵ月前より,発赤と熱感を伴って急激に腫瘤が増大した。腫瘤は直径7cmの弾性硬のドーム状の腫瘤であった。皮膚生検にて悪性腫瘍が疑われ,初診の1ヵ月後に腫瘍切除術と遊離植皮術を行った。病理組織学的に核の異型性と多数の核分裂像を伴う紡錘型細胞が密に増殖していた。免疫染色にてvimentinとS-100蛋白が陽性であった。家族歴にも既往歴にもvon Recklinghausen病(I型神経線維腫症;NF1)の症候はなく,悪性神経鞘腫のNF1非合併例と診断した。局所切除の約8ヵ月後に右腋窩のリンパ節の腫脹が出現し,同部のリンパ節摘出にて転移を認めた。