抄録
アトピー性疾患との関連が疫学的に認められている代表的環境汚染物質であるジーゼルエンジン排気微粒子(DEP)とホルマリン(FA)の培養ヒトT細胞,樹状細胞に及ぼす影響を検討した。その結果,DEPとFAがほぼ共通した作用を示し,しかもT細胞に関しては,IFN-γ,IL-10の産生低下,樹状細胞には,IL-12の産生低下と,免疫系をTh2に偏倚させる作用があることが明らかとなった。そこで,その分子メカニズムを明らかにするためDNA arrayを用いて検討したところ,両者が共通してFoxO3a依存性の分子であるGadd45a,GILZの発現を誘導することが明らかとなった。興味深いことに,これらの分子は,マウスを用いた実験において,IFN-γ産生を抑制するpotentialがあることが報告されている。また,この異なった環境汚染物質が共通の分子の誘導を介して,免疫反応に影響を及ぼしていることを考えると,両者の相互作用,相乗作用も推測される。さらに,今回の一連の研究により,生体内に有害な化学物質が進入した際の生体ストレス反応により誘導される蛋白質が,免疫系に多大な影響を及ぼす可能性が示された。