皮膚の科学
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5 巻, Suppl.7 号
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セッション1.アトピー性皮膚炎の難治と免疫・アレルギー機序に関する問題
  • 佐藤 伸一
    2006 年 5 巻 Suppl.7 号 p. B1-B4
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/03/11
    ジャーナル 認証あり
    IgEは健常人でも30~40%に検出され,さらにIgEの存在は,その後のアトピー性皮膚炎の発症を予測しないとされている。またマウス皮膚に抗原を反復投与した場合,IgE産生を誘導しうることから,IgEは皮膚炎の結果であることが示唆されている。しかし,アトピー性皮膚炎全体でみるとIgEはその重症度と相関することから,IgEは増悪因子として作用している可能性も考えられる。アレルゲンの反復刺激によってIgE産生が誘導されることから,ステロイド外用剤などで炎症を早期に抑制することによって,IgE産生を減少させ,IgEによる難治化の対策になりうると考えられる。
  • 相場 節也
    2006 年 5 巻 Suppl.7 号 p. B5-B10
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/03/11
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性疾患との関連が疫学的に認められている代表的環境汚染物質であるジーゼルエンジン排気微粒子(DEP)とホルマリン(FA)の培養ヒトT細胞,樹状細胞に及ぼす影響を検討した。その結果,DEPとFAがほぼ共通した作用を示し,しかもT細胞に関しては,IFN-γ,IL-10の産生低下,樹状細胞には,IL-12の産生低下と,免疫系をTh2に偏倚させる作用があることが明らかとなった。そこで,その分子メカニズムを明らかにするためDNA arrayを用いて検討したところ,両者が共通してFoxO3a依存性の分子であるGadd45a,GILZの発現を誘導することが明らかとなった。興味深いことに,これらの分子は,マウスを用いた実験において,IFN-γ産生を抑制するpotentialがあることが報告されている。また,この異なった環境汚染物質が共通の分子の誘導を介して,免疫反応に影響を及ぼしていることを考えると,両者の相互作用,相乗作用も推測される。さらに,今回の一連の研究により,生体内に有害な化学物質が進入した際の生体ストレス反応により誘導される蛋白質が,免疫系に多大な影響を及ぼす可能性が示された。
  • 片山 一朗, 室田 浩之
    2006 年 5 巻 Suppl.7 号 p. B11-B16
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/03/11
    ジャーナル 認証あり
    アトピ-性皮膚炎(以下ADと略す)の病因論,病態解析に関して,アトピー性皮膚炎症候群としてとらえる考え方が欧米の研究者より提唱され,アレルギー機序と非アレルギー機序によるアトピー性皮膚炎の存在が認知されるようになりつつある。このような考え方は今後アトピー性皮膚炎の診断,治療の考え方に大きな影響を与えることが予想される。本稿ではこのようなアトピー性皮膚炎の病因論につき,サイトカイン・ケモカインを中心に最近の知見を述べる。
  • 照井 正
    2006 年 5 巻 Suppl.7 号 p. B17-B20
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/03/11
    ジャーナル 認証あり
    血中の好酸球増多と皮膚組織内への好酸球浸潤とそれが産生する塩基性顆粒蛋白の沈着がみられる皮膚疾患として,アトピー性皮膚炎(AD)や蕁麻疹,好酸球増殖症候群などがあげられる。AD病変部の病理組織の特徴は,海綿状態をはじめとする表皮の変化と,真皮における好酸球を混じる炎症細胞浸潤である。本稿では,ADと好酸球の関係,好酸球の皮膚浸潤メカニズムと病変形成における役割ついて,私たちが行った研究成果を紹介しながら好酸球を標的とした治療について概説する。
  • 中村 晃一郎
    2006 年 5 巻 Suppl.7 号 p. B21-B23
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/03/11
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎(AD)の病変部にはT細胞,好酸球,肥満細胞などの浸潤を認め,これらの細胞がサイトカインやケモカインを産生することによって皮膚炎の増悪,かゆみの増悪を惹起していると考えられる。筆者らは,ADの病態における白血球走化因子としてのケモカインの作用が明らかにした。またADの標準治療薬として使用される副腎皮質ステロイド軟膏やタクロリムス軟膏などの免疫調節薬が,ケモカイン産生に対して抑制作用を有することを明らかにした。ADの病態におけるケモカインの作用について最近の知見を紹介した。
セッション2-1.アトピー性皮膚炎の悪化因子と環境要因
  • 高橋 一夫
    2006 年 5 巻 Suppl.7 号 p. B24-B28
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/03/11
    ジャーナル 認証あり
    環境中の化学物質汚染は残念ながらかなり深刻である。昨今のアレルギー疾患の増加,重症化には環境要因の変化が重要と思われるが,その背景として環境中におびただしい化学物質汚染によって引き起こされたのではないかと考えた。今回はその中で2つの化学物質,トリブチル錫(TBT)とシックハウス症候群の原因物質であるホルムアルデヒド(FA)を取り上げる。TBTは環境ホルモンの一つであるが,最近Th1/Th2バランスをTh2にシフトさせ,結果としてアレルギー疾患の増加に関与している可能性が示唆されている。また,FAがアトピー性皮膚炎に非アレルギー性に悪化要因となる事も明らかになった。環境因子の解析といっても多岐にわたるが,新たな知見を積み上げ環境問題に警鐘を鳴らし続ける事が必要であると考えられる。
  • 岩月 啓氏, 大野 貴司, 山崎 修
    2006 年 5 巻 Suppl.7 号 p. B29-B32
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/03/11
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎の増悪因子の一つとして黄色ブドウ球菌は重要である。黄色ブドウ球菌表面のタイコ酸はTh2型免疫応答へシフトさせ,protein Aは表皮角化細胞からIL-18を持続的に産生させる。Enterotoxin A(SEA)とB(SEB)は,正常表皮角化細胞にICAM-1 やHLA-DRを発現させる。また,アトピー性皮膚炎患者の半数以上はSEAまたはSEBの両方あるいはいずれか一方に対するIgE型抗体を有する。SEBの経表皮的感作によって真皮に好酸球や単核球細胞浸潤を誘導でき,Th2型サイトカインであるIL-4 mRNA発現を起こすが,Th1型サイトカインのIFN-γは発現しない。最近,スーパー抗原によって制御T細胞(Treg)の機能である抑制効果が失われることが示された。黄色ブドウ球菌はその菌体成分や外毒素によってアトピー性皮膚炎を増悪させる。しかし,皮膚に定着している黄色ブドウ球菌を完全に除菌し,無菌状態に保つことはできない。角層内でバイオフィルムに包まれて静止期にあるような定着(colonization)した黄色ブドウ球菌に対しては,抗菌療法も消毒も十分な効果発現は期待できない。皮膚を清潔に保ち,適切なアトピー性皮膚炎治療を実施することにより,黄色ブドウ球菌を増えすぎないようにコントロールして,正常細菌叢と仲良くするストラテジーが理想的と思われる。
セッション2-2.アトピー性皮膚炎の悪化因子と環境要因
  • 堀尾 武
    2006 年 5 巻 Suppl.7 号 p. B34-B37
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/03/11
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎が,日光曝露で増悪すると信じている患者は少なくない。また,患者にそのように指導する医師もある。アトピー性皮膚炎を日光増悪性疾患の1つにあげる皮膚科学の教科書もある。多形日光疹,慢性光線性皮膚炎,光接触皮膚炎などの光線過敏症がアトピー性皮膚炎に合併することはあってもアトピー性皮膚炎の日光による増悪を裏付ける直接的な証拠はほとんど得られていない。多くの場合,日光による皮膚温上昇と発汗による痒みの増強と思われる。一方,アトピー性皮膚炎に対する紫外線の治療効果は周知の事実であり,奏功機序も光免疫学的に理解することができる。
  • 生駒 晃彦
    2006 年 5 巻 Suppl.7 号 p. B39-B42
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/03/11
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎患者にはかゆみ過敏がみられる。通常かゆみを生じないような些細な刺激のみならず,通常ならば痛みを生じてかゆみを抑制するような刺激でさえもかゆみを生じることが明らかになっている。さらに,発痛物質として知られる炎症性メディエーターもかゆみを生じ,それは抗ヒスタミン薬では抑制できないことが明らかにされた。アトピー性皮膚炎のかゆみ抑制に炎症の抑制が必須であることが示唆される。
セッション3-1.治療はどこまで進んだか?
  • 古川 裕利
    2006 年 5 巻 Suppl.7 号 p. B43-B46
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/03/11
    ジャーナル 認証あり
    抗アレルギー剤である塩酸オロパタジン(オロパタジン)がアトピー性皮膚炎(AD)患者末梢血単核球(PBMC)のTh2ケモカイン産生に与える影響を検討した。AD患者にオロパタジン1日10mg4週間投与し,治療前後で,血漿中およびダニ抗原刺激下培養PBMC上清中のCCL17,CCL22値を測定した。血漿中CCL17値,CCL22値,およびダニ抗原刺激下培養PBMC5日目の上清中CCL17値は治療前後で有意に減少した。また,血漿中CCL17値,CCL22値とSCORAD indexは有意に相関した。オロパタジンは,AD患者PBMCの CCL17,CCL22産生を抑制しADの症状を改善すると考えられた。
  • 古江 増隆, 中原 剛史, 内 博史, 竹内 聡
    2006 年 5 巻 Suppl.7 号 p. B47-B51
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/03/11
    ジャーナル 認証あり
    皮膚アレルギー疾患の中で,アトピー性皮膚炎は遺伝的素因に基づく多病因性の疾患であり,疾患そのものを完治させうる薬物療法は現時点ではない。よって対症療法を行うことが原則となる。我が国ではアトピー性皮膚炎治療ガイドラインが作成され,日常診療に寄与している。アトピー性皮膚炎の炎症に対してはステロイド軟膏ならびにタクロリムス軟膏による外用療法が主として用いられている。現時点ではステロイド軟膏とタクロリムス軟膏をいかに上手に組み合わせて,副作用が少なくしかも効力を最大限にできるかを患者ごとに工夫する必要がある。
  • 五十嵐 敦之
    2006 年 5 巻 Suppl.7 号 p. B52-B56
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/03/11
    ジャーナル 認証あり
    シクロスポリン内服療法はEBMの見地からもアトピー性皮膚炎に対して有効な治療法であり,ヨーロッパを中心にすでに臨床応用されている。シクロスポリンではその強力な免疫抑制作用により皮疹の速やかな改善が期待され,急性増悪し紅皮症状態となった症例,難治性の苔癬化局面や痒疹結節などを有し,ステロイド外用療法などの従来の治療法に抵抗性を示す症例,ステロイドの長期外用により皮膚萎縮,毛細血管拡張,ステロイド紫斑などの局所副作用が生じた症例などが良い適応となろう。ステロイドと異なる作用機序を持つシクロスポリンはアトピー性皮膚炎に対する一治療手段としてその存在価値は大きいと考えられる。しかしその長期投与については慎重を要し,今後アトピー性皮膚炎の治療ガイドラインの中でのシクロスポリン内服療法の位置づけが明確にされる必要があろう。
セッション3-2.治療はどこまで進んだか?
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