2009 年 8 巻 Suppl.12 号 p. B667-B677
当院アトピー性皮膚炎(AD)外来を受診した患者のうち精神的因子の関与が疑われる38名の患者において,心理状態,特に不安とうつ状態が皮膚炎や免疫系および掻破行動に及ぼす影響を検討した。不安の指標としてはSTAIを,うつの指標としてはSRQ-Dを用いた。夜間掻破行動の定量的解析には腕時計式モニターを使用した。結果は,STAIによる状態不安と特性不安のいずれもSRQ-D値と正の相関を示した。また特性不安と血清総IgE値において正の相関がみられた。Th1/Th2比は皮疹スコアおよび血清総IgE値と逆相関を示したが,心理状態とはいずれも相関を認めなかった。就寝時間における掻破時間の割合は心理状態と相関を認めなかったが,NK細胞活性と相関した。さらに,うつの境界域以上の患者に対し塩酸パロキセチンを,不安の強い患者に対してクエン酸タンドスピロンを3ヵ月間投与したところ,皮疹とかゆみについて前者で7名中5名,後者で5名中2名において改善がみられた。