皮膚の科学
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8 巻, Suppl.12 号
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  • 片岡 葉子
    2009 年 8 巻 Suppl.12 号 p. B581-B585
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/04/18
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    心身症とは,身体疾患の中で,心身相関の病態が認められる場合の総称である。この病態の解決のためには,心理的・社会的な因子についても考慮しながら診療する心身医学的治療が有効である。アトピー性皮膚炎における心身相関を示す象徴的な例として,不登校あるいはうつ病を合併するアトピー性皮膚炎をとりあげ解説した。それぞれとアトピー性皮膚炎との関連は,単純な因果関係ではなく,円環関係あるいは相互関係をなしており,悪循環によって皮膚炎の難治化をきたしていると考えられる。皮膚科的治療と同時に心理精神的および社会的因子への治療や介入をおこなうことで,難治であったアトピー性皮膚炎も改善することが多い。
  • 片渕 俊彦
    2009 年 8 巻 Suppl.12 号 p. B586-B593
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/04/18
    ジャーナル 認証あり
    脳と免疫系との間には,相互対話が存在し,神経・内分泌系における外界および内界情報と免疫系にとっての外界(異物,微生物)および内界(腫瘍,自己抗原など)情報のクロストークによる制御機構は,「脳・免疫系連関」という概念でとらえられ,種々のストレス応答に関与していることが明らかになってきた。本稿では,「脳・免疫系連関」モデルとして,(1)拘束ストレスによる脾臓ナチュラルキラー(NK)細胞活性の抑制,(2)遅延型過敏症による接触性皮膚炎における侵害受容C線維の関与,(3)感染ストレス時の疲労の中枢神経機序,について概説し,「脳・免疫系連関」の意義について考察する。
  • 片山 一朗, 室田 浩之, 北場 俊
    2009 年 8 巻 Suppl.12 号 p. B595-B601
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/04/18
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    アトピー性皮膚炎を近年アレルギー性と非アレルギー性の異なる機序により発症する症候群とする考え方が提示されている。前者は獲得型免疫がその主役をなすと考えられている。後者はToll-like receptorを介する自然免疫システムの変調やストレスなどの神経・精神因子,皮膚のバリア機能の異常など,本来生体が持つ恒常性の破綻が大きく関与していると考えられている。自律神経機能障害としての発汗異常,異常血管反応,痒み感覚の変調と皮膚炎発症,増悪との関連性が検討されており,アトピー性皮膚炎の治療に関しても皮膚のストレス応答を考えた治療方針が必要と考えられる。
  • 岡本 泰昌, 小野田 慶一, 吉村 晋平, 吉野 敦, 国里 愛彦, 出本 吉彦, 岡田 剛, 山下 英尚, 山脇 成人
    2009 年 8 巻 Suppl.12 号 p. B603-B609
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/04/18
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    われわれはストレスへの適応破綻やその治療法の神経生理学的基盤を明らかにするために,機能的磁気共鳴画像法(functional Magnetic Resonance Imaging:fMRI)と脳磁場計測法(Magnetoencepharography:MEG)といった脳機能画像解析手法を用いていくつかの検討を行っている。その研究成果のうち,1)心理的ストレスの認知に前頭前野-辺縁系ネットワークが関与する,2)ストレス事象の予期は前頭前野を介して感覚入力を調整する,3)セロトニンは前頭前野-線条体ネットワークにおいて長期的な報酬予測を制御する,4)情緒的サポートは前頭前野を介してこころの痛みを軽減する,ことを本稿では紹介する。
  • 上出 良一
    2009 年 8 巻 Suppl.12 号 p. B611-B615
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/04/18
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    アトピー性皮膚炎の増悪に関連するストレッサーについて日々の外来・入院診療,ならびに患者勉強会で明らかになった事項をまとめた。成人では職業上の悩みが多く,特に過重労働や過剰適応が挙げられる。小児では母親との関係が最も問題となる。個々の患者でストレッサーは異なるが,ストレッサーの確定や除去・緩和よりも,患者の思いを共感的,受容的態度で受け止め,そのつらさやご苦労を労うことが最も大切である。ストレッサーそのものは軽減されなくても,ストレスにより嗜癖的掻破に陥っていることに気づいてもらい,患者のストレスに対する対応に変容が起こるよう促しながら,根気よくつきあっていくことが肝要である。
  • 坂野 雄二
    2009 年 8 巻 Suppl.12 号 p. B617-B623
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/04/18
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    アトピー性皮膚炎の症状の維持・悪化には,心理的ストレスや不安といった心理社会的要因が関連していることが指摘されている。また,AD患者は,症状の結果として日常生活が障害されQOLが低下していることも報告されている。本論では,1)AD症状に心理社会的要因が大きく関与し,治療を効果的に進めるために心理社会的要因の改善指導が必要なことを先行研究の展望に基づいて指摘し,2)掻爬行動を理解しその修正の指導を考える際に機能分析の視点を導入することの重要性を指摘し,3)認知行動療法の視点からストレスマネジメントを行うことの重要性を指摘するとともに,4)ストレスマネジメントを行う際の留意点を考察した。
  • 羽白 誠
    2009 年 8 巻 Suppl.12 号 p. B625-B628
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/04/18
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    アトピー性皮膚炎患者でストレスの関与が疑われた場合は,まず話を聴くのがよい。診断が難しければ心理検査を用いることをお勧めする。治療については症状が軽ければ話を聴いて,つらさを理解することによって改善することもある。またストレスで発疹が増悪することを気づかせることで改善することもある。さらに皮膚科的治療の負担を軽減させる工夫も必要である。これらによっても改善が思わしくなければ,自律訓練法や行動療法などの心理療法や向精神薬を併用する。心理療法で最も重要なことは患者自身にやる気がなければうまくいかないことである。向精神薬については皮膚科医でも使用できるものがあり,いかに内服させるかがポイントとなる。
  • 清水 良輔
    2009 年 8 巻 Suppl.12 号 p. B630-B634
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/04/18
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎が心身症であると考えてブリーフセラピーを応用した心身医学療法を行っている。患者とそのシステムにジョイニングし,慢性経過がもたらす様々な内在化された感情を外在化し,繰り返している偽解決努力から患者,家族を開放するために解決志向面接をベースに様々な介入を行っており,患者がかかえる問題に対する会話例や掻破行動に対する行動処方などを紹介した。
  • 細谷 律子
    2009 年 8 巻 Suppl.12 号 p. B636-B641
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/04/18
    ジャーナル 認証あり
    森田療法は1919年に森田正馬により創案された精神療法で,神経症の治療として知られてきた。不安緊張の結果おこった症状や行為に対するとらわれの打破と,完全欲の強い生き方の修正をめざす。不安と表裏一体に存在する自己実現の欲求に着目し,“不安を感じながらも自分を生かしていく生き方”すなわち“あるがまま”を体得させていく。これらの治療行程は当初は入院により行われたが,近年は外来で行われることが多くなった(外来森田療法)。難治になった成人のアトピー性皮膚炎患者は,しばしば,受験などの現実の課題に直面し,不安から精神交互作用(注意と感覚の悪循環)が生じかゆみに敏感になり,あるいは掻破行動に逃避し強迫的に行ううち掻破行動にとらわれていることが少なくない。外来森田療法によりかゆみや掻破行動,さらにはアトピー性皮膚炎に対するとらわれが打破され,不安をもちながらも人生の課題に取り組み自分を生かしていくことに喜びを感じられるようになると,患者の皮膚症状はしばしばめざましく改善していく。
  • カルデナス 暁東
    2009 年 8 巻 Suppl.12 号 p. B643-B647
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/04/18
    ジャーナル 認証あり
    慢性疾患であるアトピー性皮膚炎は世界的に増加傾向がみられるが,抜本的かつ根治的な治療法が存在しないため,患者には長期間の治療が必要となる。疾患の特有の症状および複雑な治療のため,健康な乳幼児と家族に比べ,AD乳幼児とその家族が多くの課題を抱えている。AD乳幼児と家族を支えるために,医療者間のチームワークが重要となってくる。ここでは,外来において看護師が医師と連携を図りながら,AD乳幼児の母親を対象に開発したスキンケア指導プログラムの有効性を評価する研究の結果を踏まえて,患者と家族に求められている看護師の役割について述べたい。
  • 藤原 由子
    2009 年 8 巻 Suppl.12 号 p. B649-B652
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/04/18
    ジャーナル 認証あり
    病状の悪化により入院を要した場合,病棟では患者の生活を24時間丸ごと受け止めることになる。住居環境や起床就寝時間といった生活リズム・ストレスなどの心身への負担が大きく影響するアトピー性皮膚炎の場合,患者にとって入院とは病気の治療だけでなく,今後の病気を管理していくための方法を習得・再評価するチャンスである。今回は看護師が行うアトピー性皮膚炎患者への治療支援を中心に,なじみがある病気ではあるが,実は専門的な看護となると,どうしていいか分からないといったアトピー性皮膚炎患者の日常生活の支援のあり方について述べる。
  • 筒井 順子
    2009 年 8 巻 Suppl.12 号 p. B654-B658
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/04/18
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎(AD)に心理療法を提供できる病院や施設は限られている。一般的な皮膚科外来で心理療法を行うならば,集団形式での適用が現状に適していると思われる。先行研究では効果的な心理療法は,掻破に対するアプローチとリラクセーション法を含めたストレス・マネージメントの両方の組み合わせであることが明らかになっている。しかしながら筆者らが作成したこれらの技法を組み合わせた集団心理療法の予備研究では,集団療法にどのように参加を呼びかけるかも重要な課題であることが示唆された。今後は行動変容ステージモデルを援用し,それぞれの変容ステージに応じたアプローチが有用であるかもしれない。
  • 土口 千恵子
    2009 年 8 巻 Suppl.12 号 p. B660-B665
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/04/18
    ジャーナル 認証あり
    平成19年度より従来の特殊教育から特別支援教育に変わり,病気や障がいのある子どもに応じた教育が,さらに保障されるようになった。入院治療中の病気の子どもの教育を支えてきた大阪府立羽曳野養護学校は,平成20年度より羽曳野支援学校と名称が変わり,さらにセンター的機能として医療・地域と連携した地域支援活動を推し進めている。
    今回は,養護教諭へのアンケート調査から見えた,ADの児童生徒の学校生活の実態とADで入院した児童生徒に対し,入院中より呼吸器・アレルギー医療センターと連携して,退院後の支援体制を構築した事例からより,今後支援学校(病弱)が果たすべき役割とアレルギー生活指導管理表の活用について報告する。
  • 渡辺 千恵子, 相原 道子, 竹下 芳裕, 池澤 善郎
    2009 年 8 巻 Suppl.12 号 p. B667-B677
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/04/18
    ジャーナル 認証あり
    当院アトピー性皮膚炎(AD)外来を受診した患者のうち精神的因子の関与が疑われる38名の患者において,心理状態,特に不安とうつ状態が皮膚炎や免疫系および掻破行動に及ぼす影響を検討した。不安の指標としてはSTAIを,うつの指標としてはSRQ-Dを用いた。夜間掻破行動の定量的解析には腕時計式モニターを使用した。結果は,STAIによる状態不安と特性不安のいずれもSRQ-D値と正の相関を示した。また特性不安と血清総IgE値において正の相関がみられた。Th1/Th2比は皮疹スコアおよび血清総IgE値と逆相関を示したが,心理状態とはいずれも相関を認めなかった。就寝時間における掻破時間の割合は心理状態と相関を認めなかったが,NK細胞活性と相関した。さらに,うつの境界域以上の患者に対し塩酸パロキセチンを,不安の強い患者に対してクエン酸タンドスピロンを3ヵ月間投与したところ,皮疹とかゆみについて前者で7名中5名,後者で5名中2名において改善がみられた。
  • 内 小保理, 内 博史, 小河 祥子, 權藤 知聡, 師井 洋一, 古江 増隆, 樗木 晶子
    2009 年 8 巻 Suppl.12 号 p. B680-B685
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/04/18
    ジャーナル 認証あり
    九州大学病院皮膚科では初診患者に対しDermatology Life Quality Index(DLQI)とSkindex-16を用いたQOL調査を行っている。解析対象とした全患者2643名のうちアトピー性皮膚炎(AD)患者は224名であった。湿疹皮膚炎群患者のQOLは他の疾患群患者に比べ低下していたが,湿疹皮膚炎群の患者の中でもAD患者のQOLはさらに低下していた。全患者では女性および若年者のQOLが障害されていたのに対して,ADでは性差や年代差はほとんどなくQOLの低下がみられた。
  • 山北 高志, 有馬 豪, 清水 善徳, 赤松 浩彦, 松永 佳世子
    2009 年 8 巻 Suppl.12 号 p. B687-B688
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/04/18
    ジャーナル 認証あり
    【目的】ストレスによるアトピー性皮膚炎(以下AD)増悪の機序を明らかにするために,正常マウスとADマウスに慢性ストレスを与え,検討した。
    【方法】HR-1マウスとADモデルであるHR-ADfマウスに対し拘束ストレスを2週間与え,皮膚肥満細胞脱顆粒率,皮膚組織中サブスタンスP(SP)を測定した。
    【結果】肥満細胞脱顆粒率は両者でストレス負荷後に有意な差で増加した。SPはHR-1ではストレス前後で差はなかったが,HR-ADfではストレス負荷により有意な差で上昇していた。
    【結語】慢性ストレスはHR-1マウスと比較し,HR-ADfマウスに対してより多くの皮膚の肥満細胞脱顆粒を引き起こし,皮膚組織中SPを上昇させた。
  • 片桐 一元, 倉橋 理絵子, 波多野 豊
    2009 年 8 巻 Suppl.12 号 p. B690-B694
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/04/18
    ジャーナル 認証あり
    慢性ストレスにより皮膚バリア機能回復障害が誘導され,glucocorticoidsがそのメディエーターとされている。今回,我々は,急性ストレスによる皮膚バリア機能障害について解析を行った。12時間の過密環境での飼育ストレス負荷により,皮膚バリア機能の回復障害が生じた。あらかじめ機能的除神経を施したマウスでは,ストレスによる影響が消失した。さらに,サブスタンスPの皮内投与により皮膚バリア機能回復障害が生じた。以上の結果より,急性ストレスでは末梢神経機能を通じて皮膚バリア機能回復障害が誘導されることが明らかとなり,サブスタンスPが有力なそのメディエーターであると予想される。
  • 吉良 正浩, 室田 浩之, 片山 一朗
    2009 年 8 巻 Suppl.12 号 p. B696-B699
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/04/18
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎は慢性に経過する皮膚炎であり,様々な誘因により増悪する。心理的ストレスも増悪因子のひとつである。今回われわれは,心理的ストレスが増悪因子と考えられたアトピー性皮膚炎の3例を経験した。症例1:8歳,男児。学校の担任教師の言動が心理的ストレスの原因であった。症例2:38歳,男性。仕事上のストレスに伴い症状が増悪した。症例3:26歳,女性。母親との情緒的関係の成熟に問題があると考えられた。個々の症例について若干の考察を加えた。
  • 青木 敏之
    2009 年 8 巻 Suppl.12 号 p. B702-B705
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/04/18
    ジャーナル 認証あり
    36歳,男性。経理担当の会社員。痒疹型アトピー性皮膚炎。初診後,標準治療で経過を見るが変化少なく,途中から症状が次第に悪化し遂に最悪期に到る。その4ヵ月前にパワーハラスメントの告白があり,原因である上司の転出が最悪期と一致した。その後約6ヵ月で初診時の状態にほぼ落ち着いたが痒疹はなお持続する。
  • 前田 七瀬, 猿丸 朋久, 木嶋 晶子, 吉田 直美, 西野 洋, 片岡 葉子
    2009 年 8 巻 Suppl.12 号 p. B707-B712
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/04/18
    ジャーナル 認証あり
    13歳,男児。幼少時より重症アトピー性皮膚炎(AD)にて加療していたが,9才時,アスペルガー障害,発達障害と診断された。その後も両親の離婚や母親が精神状態不安定であり,スキンケアが十分に行えず,入退院を繰り返していた。経過中にパニックを発症し,自己欲求が満たされない際・他人と衝突した際などに,周囲への暴力行為・自傷行為に至り,精神的に非常に不安定となった。児童精神科医からパニック時の対処法の指導を受け,併診しながら加療を続けた。我々の本人への対応として,(1)パニック時は周囲に害が及ばないように配慮した。(2)話を傾聴し,支持した。(3)努力を誉めることを重視した。(4)不適切な行動は明瞭に指摘し,指導を行った。(5)理解しやすいように,あいまいな表現にならないように努めた。ADの治療に関しては,ステロイド外用指導には,図を用いてわかりやすく説明した。頻回に通院し,治療へのモチベーションをあげるようにした。この対応により,徐々に精神的に安定したことで,パニックを起こさないようになり,皮膚症状も軽快した。精神的な状態によって,ストレスによる掻破やセルフコントロールの不備が生じ,皮膚症状が大きく左右されるため,精神面の安定および適切な適応のサポートは,本児の日常生活のみでなく,皮膚炎を改善させる上でも非常に重要な因子であった。成長と共に生じた問題とその対応について報告する。
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