抄録
再生医療の分野は,創傷治癒でも有用な手段となりつつある.形成外科医は,臨床の場で人工真皮という足場を用いて,創傷治療を行なっている.既存の足場のみならず我々は,ポリグリコール酸を使用したナノファイバーの足場(PGA/collagen)を開発し,過去に動物実験でその効果を実証し報告している.
また線維芽細胞成長因子(FGF)は,創傷治癒を促進させるシグナルとして重要な位置を占めており,その製剤が広く本邦では使用されている.臨床の場では,各種足場との組み合わせで,創傷治療の幅を広げている.
今回,3種の人工真皮およびPGA/collagenをFGFと組み合わせて,創傷治癒における血管新生能能力を比較した.
9週齢の雄の糖尿病マウスを用いた.マウスの背部に創傷を作製し,各種人工真皮およびPGA/collagenにFGFを添付した群と添付しない群に分けた.5日後に周囲組織を含めて創傷部を採取して,組織学的に血管密度を評価した.
PGA/collagen にFGFを添加すると添加しないより有意に血管密度が増加したが,他の3 種の足場ではFGF 添加に起因する有意な血管密度増加がみられなかった.またFGF を添加した全4種の足場のなかでPGA/collagenが,2種の人工真皮(テルダーミス®とペルナック®)との間で統計的有意差があった.
PGA/collagenとFGFの組み合わせは,2種の人工真皮より血管新生を促し,FGFとの相性が良いことが示唆された.これは,既存の足場よりPGA による効果およびナノファイバーによる影響がFGF および創傷治癒に有利に働くと考えられた.