抄録
生後一年間のヒトの運動機能にはヒト特有の変化が観察される.筆者は二足での立位姿勢や歩行運動の制御に関連する足関節周りの筋の相反性神経支配の発達過程に注目して縦断的な研究を行った.その結果,立位姿勢や歩行運動の獲得前後に拮抗筋が共収縮する相反性興奮の亢進とその後の相反性神経支配の獲得を観察した.この過程は冗長な身体運動の制御の自由度を減少するためのダイナミックな過程として捉えることかできる.一見静的な立位姿勢時にもヒトの身体では複数のサブシステムが相互作用して自由度を減少する組織化された運動が行われており,発達過程は一つの協調的なシステムの変化の過程として捉えることができる.