バイオメカニズム学会誌
Print ISSN : 0285-0885
26 巻, 1 号
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解説
  • 多賀 厳太郎
    原稿種別: 本文
    2002 年 26 巻 1 号 p. 3-6
    発行日: 2002/02/01
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル フリー
    ヒトの脳と行動の初期発達は動的で複雑な過程であり,単調に発達が進んでいくという考え方では説明のつかない現象が数多く存在する.特に機能単位の分化と統合がどのような機構で成立するかは本質的な問題である.この点に関連して,自発運動の変化,視覚系におけるバインディング問題,運動と知覚の統合,歩行の発達,脳の動的活動の変化のような,基本的な運動や知覚の初期発達に焦点を当てる.そして,運動計測,心理物理実験,脳非侵襲計測,計算機シミュレーション,比較行動発達学など多角的なアプローチを概説する.
  • 正高 信男
    原稿種別: 本文
    2002 年 26 巻 1 号 p. 7-10
    発行日: 2002/02/01
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル フリー
    初語発現に至るまでの乳児期における,言語習得の過程についての展望を行った.分節的特徴を備えた言語的音声である喃語は,生後6か月以降になって初めて出現する.その発達は単に成熟の産物として発現するのではなく,聴覚経験と運動学習が不可欠なことが示唆された.とりわけ歩行運動を支配するのと同一起源と思われるリズミックな身体運動との同期が重要な役割を果たしていることが,明らかとなった.
  • 北城 圭一
    原稿種別: 本文
    2002 年 26 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2002/02/01
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル フリー
    生後一年間のヒトの運動機能にはヒト特有の変化が観察される.筆者は二足での立位姿勢や歩行運動の制御に関連する足関節周りの筋の相反性神経支配の発達過程に注目して縦断的な研究を行った.その結果,立位姿勢や歩行運動の獲得前後に拮抗筋が共収縮する相反性興奮の亢進とその後の相反性神経支配の獲得を観察した.この過程は冗長な身体運動の制御の自由度を減少するためのダイナミックな過程として捉えることかできる.一見静的な立位姿勢時にもヒトの身体では複数のサブシステムが相互作用して自由度を減少する組織化された運動が行われており,発達過程は一つの協調的なシステムの変化の過程として捉えることができる.
  • 八倉巻 尚子
    原稿種別: 本文
    2002 年 26 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 2002/02/01
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル フリー
    1歳児歩行について,左右方向の関節変位,関節角度変位,歩行リズムを求め,歩行開始からの月数に伴う歩行パターンの変化ならびに成人歩行との違いを比較検討した.その結果,1歳児の中でも歩行開始初期の乳幼児歩行は成人歩行と大きく異なり,歩行開始から6ヵ月内に著しい発達が見られた.すなわちひとり歩きが可能になってから半年程度は,肩や腰の左右の揺れが大きい,股関節の伸展が弱い,着地時の膝屈曲がやや大きく可動域が小さい,歩調が大きい,といった乳幼児特有の歩行パターンが顕著にみられる.それ以降は徐々に成人様歩行に移行するが,歩行比(歩幅[m]/歩行率[steps/min])からみると成人歩行に至るのはおよそ15歳であると推測された.
  • 宮丸 凱史, 加藤 謙一
    原稿種別: 本文
    2002 年 26 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 2002/02/01
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル フリー
    ヒトの歩行獲得までの過程は明確にされているが,歩行から走運動出現までの移動運動形態に関する研究はみられない.そこで,生後12カ月から18カ月の彼験児を対象に歩行から走運動出現までの動作パターンの変容を縦断的にとらえた結果,生後17カ月の子どもの走運動が確認できた.また,歩行に続いてまずリーピングが獲得され,その後走運動が出現することが明確になった.走運動は既得の運動(歩行)からの「自発的分化」とみられ,その移行過程における四肢の動作パターンには違いはみられなかった.したがって,走運動は歩行と同様の動作パターンを使っている間に生じる出力(鉛直地面反力)のスケールアップによると推察された.
研究
  • 江原 義弘, 別府 政敏, 野村 進, 國見 ゆみ子, 高橋 茂, 野々垣 学
    原稿種別: 本文
    2002 年 26 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2002/02/01
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル フリー
    健常者の両足に装具を装着し,その下に靴を履かせた木製足部をしっかり固定して,歩行計側室を歩行させた.歩行データから関節モーメントなどを計算して,下腿部から足部に流れるパワーを計算した.この値から足部の力学的エネルギーの時間微分を減算することで足部に注入されるパワーを計算し,これを時間積分してエネルギーとした.靴を履かせずに木製足部をむき出しにして歩いた状態の値を基準値として減算することで靴の踵で吸収されるエネルギーを求めた.運動靴ではケーデンス60-126で約10ジュールのエネルギー吸収量を得た.
  • 宮崎 信次
    原稿種別: 本文
    2002 年 26 巻 1 号 p. 32-39
    発行日: 2002/02/01
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル フリー
    独居高齢者の孤独死を防ぐ目的で,緊急警報システムを設計しその基本性能を調べた.エレクトレットコンデンサマイクロフォンを用いて撓骨動脈遠位の皮膚上から脈波信号を検出する.信号は増幅・フィルター処理された後,2つの比較器に入力される.第1の比較器(低い閾値をもつ)では脈波を検出し,それが5秒以上現れなかった場合に心停止の警報を出す、第2の比較器(高い閾値をもつ)は体動に由来するアーチファクトを検出し,それが15分以上現れなかった場合に意識不明の警報を出す.4人の被験者による第1段階の実験の結果は本システムの可能性を強く示唆するものであった.
ショートペーパー
  • 湯 海鵬, 豊島 進太郎, 星川 保
    原稿種別: 本文
    2002 年 26 巻 1 号 p. 40-44
    発行日: 2002/02/01
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル フリー
    本研究は,高齢女性5名の縦断追跡研究中に,不幸にして死亡した2名の被験者の生前約1年前の最終歩行テストのデータの検討から,他の3名との比較を通して,高齢者の歩行動作の衰退様式を考察した.ビデオ映像から通常歩行動作の歩行速度,歩幅,歩数,つま先の垂直変位および1サイクルの時間などを算出した.膝の伸展力についても計測した.この2名の死亡約1年前の歩行動作は,歩行速度を初めとする動作の衰退傾向が認められた.その中,特に歩幅,つま先の垂直変位および膝の伸展力の著しい低下が見られた.約1年間における歩行速度,歩幅およびつま先の垂直変位の低下率については,死亡した2人の値は,今まで報告された一般高齢者より大きかった.
  • 大山 光夫, 山下 忠, 坂本 哲三
    原稿種別: 本文
    2002 年 26 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 2002/02/01
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル フリー
    本論文は,シーソ上を動くローラをシーソの傾きを用いて制御する,シーソ・ローラ糸の手動制御について,オペレータヘの指示の学習効果に与える効果について報告するものである.オペレータは,ローラを目標位置に動かすためにジョイスティックを用いる.実験結果は,まず制御偏差に対して人間の制御がどのように対応するかを示しており,コンピュータ制御と比較される.次に,オペレータだけによる学習特性に加えて,コンピュータからの制御支援情報をオペレータに与えた場合の結果を示す.これにより,手動制御を行うにあたっての支援情報の影響は制御の整定時間に大きな影響を及ぼすことを性能比較により明らかにする.
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