抄録
本研究は, 介護作業の中で, 最も体に負担の大きいと言われる車椅子への移乗動作を三次元的撮影し, 映像データに基づいて介護者の重心の変位, 関節角度および身体エネルギーを算出した. 理学療法士(PT)と社会福祉学専攻学生の介護動作との比較検討を行い, 車椅子への移乗動作の特徴を明らかにした. 学生に比べPTの作業時間と作業距離が短かった. 身体の姿勢については, PTはできるだけ腰への負担を軽減するために, 大腿の筋群を主に用いて被介護者を抱き上げ, 腰掛けさせるという動作になっている. このような動作は, 身体の上下動が大きく, 力学的仕事の量も多くなる可能性はあるが, 腰の保護と腰痛の予防には有効な動作と考えられる.