2004 年 28 巻 2 号 p. 56-60
機械論的世界観や決定論に基づいて自然科学になろうとした心理学は,同じ世界観から成立した物理学と同じ運命をたどり,心と身体を分離し,心を身体(自然)から排除するか,心を機械的な身体の支配者とするか,どちらかの結論に追い込まれた.この方法では,ヒトを含めた高等動物の行為の能動性や創造性をその領域で扱うことができない.極端な場合,それらは神秘的なものとなってしまう.このジレンマに陥らないためにも,身体と心,身体と知覚と行為は同時に扱われるべき事柄,事象であると考える必要がある.この事象を分析する論理と手段の一つとして,生態心理学がある.