子どもの死亡原因の第1位である不慮の事故を低減するための工学的アプローチの必要性について述べる.事故の中でも,危険が潜在的であり,かつ,命に関わる重篤な傷害を引き起こす恐れのある「ハザード」をいかに発見して,いかにして取り除くかについて,病院を基点に網羅的に事故情報を集め,それらを知識化して,環境や製品の改善につなげるという「安全知識循環型社会」の考え方について述べる.これを形づくる工学的研究として,病院を基点にした事故サーベイランス技術,子どもの体形・行動の計測,子どもシミュレータによる事故原因究明の研究について概要を紹介する.また,これらの知識を,安全規格,商品開発,子どもや両親への啓蒙というかたちで社会に循環させる取り組みについて紹介する.