抄録
微生物はまわりの流れに身を委ねるだけではなく自律的に遊泳運動し,その運動は生存や繁殖に重要な意味をもってい
る.バイオフィルムの形成など多数の微生物が集積する現象と関連して,近年,表面近くの微生物の運動が興味を集めている.螺旋形のべん毛を回転させて泳ぐ細菌の場合,表面近くでの運動は自由空間のそれとは異なる.この原因を表面の及ぼす流体力学的な影響に求めると,表面近くではべん毛と菌体の回転に起因する横方向への力が発生すること,側方からの流れが表面の存在によって妨げられることがあげられる.単毛性細菌の遊泳運動について,流体力学的な影響による表面への集積の可能性を示唆する数値解析例と,表面近くでの3 次元運動の観察例を紹介する.