日本における交通事故死亡者数の中で歩行者の占める割合は最も高く,歩行者が車両との衝突で死亡に至る可能性は車両乗員等に比べ高い.傷害の重症度を低減させるための対策として,車両側では,衝突時のエネルギーを車両前面構造に効率良く吸収させるなどの改良を施すことが有効と考えられる.欧州および日本では歩行者保護試験法が施行され,人体各部を模擬したインパクタを用いて歩行者に対する車両の安全性を評価している.ここでは,試験法の作成や車両の設計に必要となる,車両対歩行者衝突時の歩行者の被害程度と車両剛性の関係,人体の傷害発生メカニズム,衝撃耐性について,欧州の傷害基準とともに概説する.