抄録
交通事故の外傷を低減する技術開発では実験やコンピューターを用いて事故再現解析が実施されるが,実験精度の向上や解析モデルの妥当性の確認のためPMHS(Post Mortem Human Subject) データや剖検例が使用されるケースがある.本解説ではPMHS と剖検例を用いた外傷低減の取り組みの方向性について紹介する.まず,交通事故統計で自転車乗員の致死率が歩行者よりも極めて低く,PMHS や実験用ダミー,コンピュータシミュレーションを用いた事故再現解析から外傷発生メカニズムを明確化し,新技術を開発した事例を述べる.次に,運転者が病気などにより意識消失が疑われた交通事故に対して剖検例を用いて事故再現解析から,プリクラッシュシステムに対して極めて有効な運転者の意識消失が強く示唆された事例を述べる.