バイオメカニズム学会誌
Print ISSN : 0285-0885
研究
上腕骨近位部骨折に対する逆行性髄内釘の固定性評価
酒井 利奈内野 正隆伊藤 大器田中 健誠中尾 将輝本名 美佳山田 拓哉占部 憲五味 勉馬渕 清資
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2016 年 40 巻 2 号 p. 131-136

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抄録
現在主流である順行性髄内釘は棘上筋の腱板を切る必要があり,ロッキングプレートは大きな皮膚切開が必要で侵襲 が小さいとはいえない.そこで侵襲を最小限にするため,逆行性髄内釘が共同研究者らにより開発された.本研究では,逆行性髄内釘の固定性を評価することを目的とし,従来から用いられている順行性髄内釘,ロッキングプレートを対象に力学試験を行った.対象インプラントは逆行性髄内釘,順行性髄内釘,ロッキングプレートとし,樹脂製上腕骨モデルに,AO 分類TypeA3 の骨切りを行い2part 骨折を作成した.力学試験は外反試験,ねじり試験,圧縮試験を行った.外反に対する変位は,ロッキングプレート,逆行性髄内釘,順行性髄内釘の順で高値を示した.圧縮剛性は,順行性髄内釘,逆行性髄内釘,ロッキングプレートの順で高値を示した.内旋と外旋の平均トルクはロッキングプレートが最も大きい値を示した.逆行性髄内釘は,内旋のねじりに対して他の内固定と剛性が同等であり,外反と圧縮荷重に対する変位はロッキングプレートよりも優れていたため,固定性に問題がないことを証明できたと考える.逆行性髄内釘は侵襲を減らすという観点から,上腕骨近位部骨折に対する内固定法として有用である.
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