バイオメカニズム学会誌
Print ISSN : 0285-0885
研究
ロコモティブシンドローム該当者に特徴的な歩行中の下肢関節運動
鈴木 漠小林 吉之持丸 正明藤本 浩志
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2016 年 40 巻 3 号 p. 183-193

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抄録

本研究は,日常生活中の歩行動作から,ユーザがロコモティブシンドロームに該当するかを評価する技術を将来的に開発するために,まずロコモ該当者の歩行特徴を明らかにすることを目的とした.本研究では,三次元動作計測装置と床反力計を用いて高齢者54 名(うちロコモ該当者10 名)の歩行を計測した.得られたデータより1 歩行周期中の下肢3 関節3 平面の関節角度を計算し,時間正規化したうえで,各時点の5 試行分の平均値と標準偏差を算出した.更にそれらのデータを標準化したうえで,54(名)× 1818(3 関節,3 平面,101 等分された平均値と標準偏差)の入力行列に対して主成分分析を行った.分析の結果得られた各主成分の主成分得点についてはロコモ該当者とロコモ非該当者でt 検定を行い,群間の差を評価した.ここで有意差が確認された主成分についてはその主成分に関する動きを再構築し,特徴となる動きの解釈に用いた.分析の結果,第6,9,12 主成分がロコモと関連していることが明らかになった.このうち第6 主成分は,股関節角度と足関節角度の観点から,第12 主成分は歩調の観点からそれぞれ歩行速度に影響しており,ロコモ該当者は非該当者よりも歩行速度が遅いことが確認された.また第9 主成分は矢状面における関節可動域に関連が認められ,ロコモ該当者は非該当者よりも可動域が小さい傾向が確認されたが,歩行速度や歩幅などの時空間変数との関連は認められなかった.以上のことから,これらの歩行特徴をセンサシステムで計測することによって,歩行動作からロコモ該当者を発見できる可能性が考えられた.

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© 2016 バイオメカニズム学会
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