抄録
長期にわたって手腕に局所的に振動をばく露されることにより,手指に末梢神経障害・末梢循環障害・関節等の運動機能障害のいずれかもしくはそれらの複合症状が現れることがある.これらの健康障害を総称して振動障害(または手腕振動症候群)と呼んでいる.手持ち動力工具などを断続的に長期間使用するような作業従事者は振動障害発症の危険性が高い.振動障害の治癒は困難であることが知られており,低振動工具の使用,振動ばく露量低減のための保護具の使用,作業時間などを考慮した振動ばく露量のコントロールなどを組み合わせた,総合的な作業環境管理にもとづく振動障害の発症防止対策が必要である.本稿では,はじめに我が国における振動障害発症の現状について概観し,手腕振動障害の原因となる手腕系振動の特性および手腕振動における振動ばく露のリスク評価の方法を解説するとともに,各種手持ち振動工具の振動測定・評価方法に関する規格について概説する.