抄録
他の運動系に比べ比較的シンプルな制御回路を持ち,入出力の定量性に優れている前庭動眼反射(vestibulo-ocular
reflex:VOR)は,空間認知能力を支える重要なシステムの1 つとして多くの脊椎動物に備わっている. VOR は単純な運動系でありながら,トレーニングによりその動特性を適応的に変化させる運動学習機能を有することから,運動学習の基本メカニズムにアプローチする優れた解析系として,実験動物を用いた多くの研究が行なわれている.本稿では,VOR の適応性変化を引き起こす中枢メカニズムにアプローチする古典的な研究を概観し,そこで提唱されたモデルをさらに深く追及する最新の知見の一部について概説する.