抄録
ヒトが他者を認知し,他者と協力や協調する能力の高さは他の動物にくらべて特異的に発達した社会的知性を持ってい ることを示している.これまで,ヒト同士の社会的行動は社会心理学や社会神経科学などの分野で研究されてきた.一方で, ヒトと協力しながら生き残っている動物もいる.イヌやウマなどの動物は,ヒトとともにヒトに役に立つ使役動物として利用 されてきたばかりではなく,ヒトと絆を形成する伴侶動物として家畜化されてきた.本稿では,相互にかわされる非言語での コミュニケーションに用いられる社会的シグナルの役割を,ヒトと動物との間において検討した研究を紹介し,社会的シグナ ルによって他者に影響し,他者から影響をうける自己との関係性の計算論的モデルに関して考察する.