バイオメカニズム学会誌
Print ISSN : 0285-0885
43 巻, 3 号
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解説
  • 岡崎 俊太郎
    2019 年 43 巻 3 号 p. 154
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/08/01
    ジャーナル フリー
  • 三分一 史和, 尾家 慶彦
    2019 年 43 巻 3 号 p. 155-160
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/08/01
    ジャーナル フリー
    神経科学の分野では計測技術の発展が著しく,神経活動の情報を高い時間空間分解能の計測システムによりイメージン グデータとして取得することが可能となっている.しかし,データ構造は複雑になり,サイズも大きくなる一方であり,さら に計測システムや計測対象に依存した様々なアーチファクトやノイズが混入しているのでこれらの補正や低減のために何段階 かの事前処理を施す必要がある.その後,有意な生体信号の検出を行い,生理学的な観点から目的とする解析を行うことにな る.本稿では脳幹の呼吸中枢を計測したイメージングデータを用い,相互相関解析を用いた呼吸ニューロンの検出,統計学的 時系列解析をベースにしたフィルタリング法による呼吸ニューロン集団の活性化パターンの検出,因果解析によるとニューロ ンネットワークの推定法について解説する.
  • 三浦 哲都, 向井 香瑛, 横山 梓, 惠谷 隆英, 工藤 和俊
    2019 年 43 巻 3 号 p. 161-166
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/08/01
    ジャーナル フリー
    人間は環境の中で適応的に運動をするために,環境の情報を知覚する.一方で身体運動はその環境情報自体に制約され, 規定されてしまうという特徴も有する.このような身体運動と環境情報の相互作用は,人―環境系における動的な秩序形成の 観点から調べられてきた.本稿ではまず,系の時間発展を数理で記述する力学系アプローチを用いて,人間の協調運動が非平 衡開放系における自己組織化の特徴を有することを示した一連の研究を紹介する.さらに同様の現象が,知覚と運動の協調や, 対人間の運動協調にも当てはまることを示した研究を概説し,最後にその発展と展望を述べる.
  • 合原 一究
    2019 年 43 巻 3 号 p. 167-172
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/08/01
    ジャーナル フリー
    多くの動物にとって,音は周辺環境を把握するための重要な手がかりである.本稿では,音を活用する夜行性動物であ るカエルに注目する.カエルは多くの種でオスが鳴き声を発し,メスはオスの鳴き声を聞きつけて近寄ってくる.著者らは, ニホンアマガエルのオス同士の音声コミュニケーションを対象に,室内実験と野外調査を実施した.その結果,室内と野外の 両方で,近くのオス同士が交互に鳴く傾向を見出した.このような鳴き方には,タイミングをずらして自分の鳴き声が他個体 の鳴き声でマスクされないようにして,自分の存在をメスに効率よくアピールする機能があるものと予想している.次に,パ ナマ共和国でトゥンガラガエルとケヨソイカの関係を調べた.トゥンガラガエルのオスはメスを呼ぶために鳴くのだが,その 鳴き声は捕食者や寄生者に盗み聞きされてしまう.ケヨソイカもトゥンガラガエルのオスの鳴き声を聞いており,鳴き声を手 がかりに近づいてカエルの血を吸う.著者らはトゥンガラガエルの鳴き声と,その鳴き声に寄ってくるケヨソイカの行動を野 外環境で計測した.その結果,たくさん鳴いているオス,一声あたりに複雑な音声成分を多く含むオスのほうが,ケヨソイカ に狙われやすいことがわかった.トゥンガエルのオスにとって鳴くことは「メスへのアピール」と「捕食者・寄生者に狙われ るリスク」 という2つの側面があり, それらのトレードオフによって適切な鳴き方が決まっているのではないかと予想している.
  • 鮫島 和行
    2019 年 43 巻 3 号 p. 173-178
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/08/01
    ジャーナル フリー
    ヒトが他者を認知し,他者と協力や協調する能力の高さは他の動物にくらべて特異的に発達した社会的知性を持ってい ることを示している.これまで,ヒト同士の社会的行動は社会心理学や社会神経科学などの分野で研究されてきた.一方で, ヒトと協力しながら生き残っている動物もいる.イヌやウマなどの動物は,ヒトとともにヒトに役に立つ使役動物として利用 されてきたばかりではなく,ヒトと絆を形成する伴侶動物として家畜化されてきた.本稿では,相互にかわされる非言語での コミュニケーションに用いられる社会的シグナルの役割を,ヒトと動物との間において検討した研究を紹介し,社会的シグナ ルによって他者に影響し,他者から影響をうける自己との関係性の計算論的モデルに関して考察する.
  • 小池 耕彦
    2019 年 43 巻 3 号 p. 179-187
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/08/01
    ジャーナル フリー
    ハイパースキャニングとは,コミュニケーション中の二者から同時に脳活動を計測し,二者間での脳活動相関といった 形でコミュニケーションを特徴づける脳活動のハイパーパラメータを計算することで,コミュニケーションの神経基盤を描出 することを目指す研究手法である.この研究手法は時折,非科学的であるとか意義を感じられないという反応に出くわす.本 研究では,筆者の過去の研究経験をもとに,ハイパースキャニング研究をおこなう意義,脳活動の二者間相関が発生する機序, さらには実験計画を立てる際の注意点などを紹介する.またこれまでに行われた幾つかのハイパースキャニング研究を紹介す るとともに,今後,さらなる検討が求められる点を議論する.
  • 牧野 遼作, 坂井田 瑠衣, 坊農 真弓
    2019 年 43 巻 3 号 p. 188-194
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/08/01
    ジャーナル フリー
    本稿では,人々の日常的・実世界におけるインタラクションを対象とした質的研究として「相互行為分析」について紹 介する.相互行為分析では,インタラクションが収録された映像を繰り返し観察し,インタラクション内の人々の振る舞い(音 声発話や身体動作など)の連なりに着目するものである.相互行為分析の実践例として,日本科学未来館における科学コミュ ニケーション場面を対象とし,人々の振る舞いの連なりに着目した3つの研究を紹介する.科学コミュニケーション場面内に おいても,人々は様々な活動に従事し,その活動は様々な環境の中で起こっている.このような中で人々は多様な形で振る舞 いを連ね,その場の活動を展開しているという詳細を相互行為分析は明らかにするものである.
研究
  • 村井 楓子, 山田 洋, 宮崎 誠司, 小河原 慶太, 松山 大輔, 佐川 暢保, 遠藤 慎也, 森田 浩介, 酒井 大輔
    2019 年 43 巻 3 号 p. 195-201
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/27
    ジャーナル フリー
    腰痛は,スポーツ選手においても発症しやすく,選手生命を脅かす可能性のある疾患である.立位体前屈時の脊柱運動および腰背部筋活動に腰痛有訴者の特徴が表れると報告されているが,スポーツ選手を対象とした研究は行われていない.そこで本研究では,バイオメカニクス的手法を用いて,大学硬式野球選手における腰痛有訴者および予備軍の特徴を捉えることを目的とした.腰痛有訴者(S群),腰痛予備軍(M群),健常者(N群)計 19名を対象とし,立位体前屈時の最大体前屈角度,腰椎屈曲角度,寛骨前傾角度,脊柱起立筋( L2,L5)の筋活動量を算出した.結果, Sおよび M群は N群に比べて最大体前屈角度が小さく,腰椎骨盤リズムに生じた変化が影響していたと推察される.加えて,体前屈角度が 60-100度に変化する際, S群および M群の L2において本来の筋収縮が行われず,筋活動量が小さかった.本研究の結果は,スポーツ現場における選手や指導者へ向けた情報提供となり,腰痛有訴者および予備軍の新たな客観的評価法の提案につながる.
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