霊長類は樹上において非常に多様な空間に適応放散しており,種によって様々なタイプの運動様式を有している.人類もまた霊長類の一種であり,直立二足歩行という特異的な運動様式も,樹上での運動から派生してきた運動であると考えられる.そうした樹上運動の一つとして垂直木登り運動がある.ヒトの直立二足歩行への進化過程において垂直木登り運動が影響したとする説がある.ただ,垂直木登り運動は,多様な霊長類においても,頻度は異なるが,ほとんどの種で行われる運動である.そこで,本稿では霊長類数種における垂直木登り運動の比較からその種間差について解説する.