抄録
本研究は,年齢と性別が歩行中の身体全体の運動学的・運動力学的特徴に与える影響を明らかにすることを目的とした.成人223 名のデータから,1 歩行周期中の全身8 関節の角度とモーメントおよび骨盤の角度の3 平面を計算し,時間正規化の後,主成分分析を行った.得られた主成分得点について,年齢層と性別を要因とする2 元配置分散分析を行った.その結果,第1,第5 主成分は性別の影響が,第3,第7,第19 主成分には年齢層の影響が認められた.下位検定の結果,第7 主成分は加齢に伴い一律に変化する特徴を,第3 主成分は若年から中年にかけて変化する特徴を,第19 主成分は中年から高齢にかけて変化する特徴を表していることが分かった.これらの主成分が関連する角度とモーメントを再構築し群間で比較した.その結果,若年から中年期には,上肢の前後方向のふり幅が減少し,1 歩行周期の50 ~ 60% での股関節と足関節の角度とモーメントのピーク値が減少すること,中年から高齢期には,上肢と下肢の動きのタイミングのずれが増大することを示した.