抄録
網膜に映る像は時々刻々目まぐるしく変化しているが,私たちは網膜像のブレを意識することなく安定で連続した視覚世
界を知覚することができる.視覚世界は自分の意志で眼を動かしているときには全くブレないのに,瞼の外側から眼球を指で軽く押しただけで簡単にブレてしまう.このことから,私たちの脳には「自分の意志で眼を動かしたときに生じる網膜像の動き」と「受動的に眼球が動いたときに生じる網膜像の動き」を切り分けて知覚する仕組みが備わっていることがわかる.本稿では,自身の随意性運動によってもたらされる視覚入力の外乱があっても,安定で連続した視覚認知を得ることができるのはなぜかという問いに関し,大脳皮質後頭・頭頂連合野の果たす役割を中心に概説する.