抄録
寝返りは生後初めて行う能動性を伴った全身運動である.それまで能動的な環境移動の経験がない乳児が,複数の身体部位を制御しなければいけない際,どのようにして全身運動を獲得しているのであろうか.寝返りは,その後獲得される四つ這いや歩行などの移動運動よりも先駆けて出現する運動である.したがって,寝返りの運動制御を理解することは,発達初期のヒトが環境における柔軟な全身運動をどのように獲得しているか理解する上で,その機序解明に寄与することが期待される.本稿では,これまでに明らかにされてきた乳児寝返りの生体力学的特性や寝返り計測の現在地,臨床応用に向けた今後への展望について概説する.