2003 年 1 巻 p. 177-187
米国の連邦原子力安全規制における内部告発者保護制度の導入は,ECP(Employee Concerns Program)と呼ばれる社内通報体制の導入・整備を原子力事業者に対して促した.これを背景に,近年では,規制主体であるNRC(原子力規制委員会)に寄せられる総告発件数は漸次減少の傾向にある.すなわち,米国原子力安全規制における内部告発者保護制度の導入は,規制システムと企業コンプライアンス(遵法)活動との間の好ましい相互作用を生み出したと言える.NRCに比べて相対的に人的資源に乏しい日本の原子力安全規制にとって,こうした相互作用は,殊に大きな意義を有する.日本においても,こうした相互作用を促進する形での施策がとられることが強く望まれる.