組織科学
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論文
マーケティングとイノベイション
大沢 豊
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1968 年 2 巻 1 号 p. 4-11

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抄録

 新しい製品あるいは技術が社会体系の中でどのような速度で普及していくかについては,E.M. Rogersの研究がある.ここではその中の採用段階過程説,パーソナル・インフルエンスの重要性,採用率におよぼすイノベイションそのものの5特性などの概念をとりあげ,それにもとづいてイノベイション普及過程を表現するコンピューターモデルを作成した.
 このモデルに適当な数値を与えてシミュレーション実験を行なったところ,いわゆる製品のライフ・サイクルのパターンに類似した採用者分布がえられた.モデル構成の過程の考察からこのパターンは,ロジスティック曲線のそれと基本的には同一の性質をもっていることがわかる.
 現実のデータにこの考え方を適用していくためには,なお考慮されなければならない数多くの問題点があるが,新製品の市場への導入およびそれ以後のライフ・サイクルの各段階に対応して,最適のマーケティング・ミックスを論ずるための基礎として,ライフ・サイクル曲線の基本的特長は,ロジスティック曲線のもつそれであるという理解は,概念整理の上から有効であると思われる.

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© 1968 組織学会/著者
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