2009 年 1 巻 3 号 p. 15-25
雇用保護法制の雇用への悪影響を主張する見解が声高に叫ばれる中,OECDの従来の調査を用いて,それらの見解に対する内在的批判を試みた論文である。検討の結果以下の結論が導きだされた。1.雇用保護法制の雇用への影響は"あいまい"というのが,理論的にも実証的にも今日の経済学研究の到達点である。2.日本についていえば国際的にみた雇用保護法制の規制水準の低さ,雇用保護法制改革の特異性から,たとえ「雇用保護法制は雇用に悪影響を及ぼす」ということが,経済学的に確立されたとしても,少なくても現段階では雇用保護法制の規制緩和は政策的選択肢とはいえない。以上のような内在的批判ののち,ひとつの外在的批判を展開して結びとした。