日本森林学会誌
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論文
グイマツ雑種F1における挿し付け後の穂の萎れを引き起こす影響要因
今 博計 立松 宏一
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2022 年 104 巻 3 号 p. 139-145

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抄録

カラマツ類の緑枝ざしでは,挿し付け後に穂の萎れが観察される。本研究では,グイマツとカラマツの種間雑種であるクリーンラーチの挿し木増殖において,挿し穂が萎れる条件を明らかにするため,(1)採穂直前の降雨,(2)挿し付け後の経過日数,(3)挿し付け後の気温,相対湿度,飽差,照度が,挿し穂の萎れ度に及ぼす影響を15カ所の生産施設で調査した。挿し穂の萎れ度は,タイムラプスカメラを用いて調べた。順序ロジスティック回帰による解析の結果,挿し穂の萎れ度を説明する最適モデルとして,採穂直前の降雨の有無,挿し付け後の経過日数,挿し床の気温の3変数を含むモデルが選択された。採穂前の72時間の降水量は挿し付け後10日間の平均萎れ度と有意な正の関係があった。また,挿し付けから3日間は萎れ度が著しく高かったが,挿し付け後の経過日数にともなって少しずつ減少した。ベイズモデルによって萎れ度と挿し付け後の環境条件との関係を推定した結果,挿し床の環境条件が,気温29.9 ℃,湿度73%,飽差9.2 g/m3を境に強い萎れが生じていることが示された。

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© 2022 一般社団法人 日本森林学会

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