社会政策
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草創期の社会保障政策に対する通商政策の規定的影響
―第一次大戦前の西洋諸国を対象とする国際比較研究―
松永 友有
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2018 年 10 巻 1 号 p. 108-121

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抄録

 本稿は,原初的福祉国家体制の草創期である第一次大戦前の時期に焦点をあて,自由貿易か保護貿易かという通商政策レジームの相違が西洋諸国各国における社会保障政策導入のあり方を重要な面で規定していたという新説を実証する。その目的のため,老齢・疾病・失業の各リスクに対応する強制加入型社会保険・年金制度,及び最低賃金制度に関する広範な各国間比較を行う。 西洋の主要工業国をことごとく射程に入れた国際比較分析の結果,次のような知見が得られた。第一の点として,各種の社会政策を導入した順序に関しては,保護貿易国が自由貿易国に先行するという明白な傾向が認められた。第二の点として,保護貿易国と比較した場合,厳しい競争圧力にさらされている自由貿易国は,重い労使負担,特に雇用主負担を避けるため,公費負担に比重を置いた社会保険・年金制度を策定する傾向が認められた。

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© 2018 社会政策学会
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