社会政策
Online ISSN : 2433-2984
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小特集1■多様化する介護サービス提供者のゆくえ
中国における福祉市場化政策の現在と今後
―介護保険制度の導入を戦略的に考える―
史 邁
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2019 年 11 巻 2 号 p. 26-38

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抄録

 本研究では,取引コスト理論の「ガバナンス機構」という概念を用いて,①中国が現在実施している介護保険制度導入の戦略的な意義と,②保険制度導入以降の政策の方向性という2点の課題について理論的な考察を行った。結論として,第一に,介護保険制度の導入は,従来の供給構造に対する「戦略的な軌道修正」として位置付けられ,現在の介護供給に生じているさまざまな現実課題の解決,ガバナンスコストの節約,また今後のサービス供給の増大などに対して積極的な意義を有する。第二に,少子高齢化がますます深刻化していく中国は,介護保険制度を導入するとしても資産特殊性の上昇問題に直面せざるを得ない。そこで,より良い介護サービスの供給構造を実現し,ガバナンスコストをより低い水準に維持するためには,「利用条件の厳格化」と「供給量の大幅増加」という二つの政策における選択肢があることが明らかになった。

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© 2019 社会政策学会
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