社会政策
Online ISSN : 2433-2984
Print ISSN : 1883-1850
小特集1■多様化する介護サービス提供者のゆくえ
介護保険サービス市場における効率性とサービスの質
―事業規模と事業範囲の拡大を中心に―
金谷 信子
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 11 巻 2 号 p. 15-25

詳細
抄録

市場化された介護保険サービスにおいて,規模の経済や範囲の経済の効果を期待する行動をとる事業者が増えている。規模の経済とは,生産量の増加に伴い平均費用が低下し収益性が向上することであり,範囲の経済とは複数の財・サービスをまとめて生産することで費用を節減し収益性が向上することである。介護保険事業の場合には,同一経営法人が,同種のサービス事業所を複数経営すること,また多種のサービス事業を経営することが相当する。ただ公共サービスの場合,経営面での効率性の追求と,公共サービスとしての質の確保の間には基本的に二律背反関係がある。このため本論では,介護保険サービス事業者が規模の経済と範囲の経済を志向することが,事業者と利用者に与える影響を分析した。その結果,介護保険サービスには規模の経済と範囲の経済が部分的に存在すること,またこうした行動がサービスの質を犠牲にする可能性が否定できないことを明らかにした。

著者関連情報
© 2019 社会政策学会
前の記事 次の記事
feedback
Top