社会政策
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特集■「一億総活躍社会」の現実を問う
「一億総活躍」と身分制雇用システム
禹 宗杬
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2020 年 11 巻 3 号 p. 14-28

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抄録

 「一億総活躍」は,諸々の社会政策を広い意味での経済政策として活用し,経済成長を推し進めようとするものである。よって,本稿においても,社会的公正という側面だけでなく,経済的効率という側面をも含めて,その可能性と限界を検討する。この際,「一億総活躍」が,日本の身分制的な雇用システムを乗り越えられるかに着目する。検討の結果は,次のとおりである。「一億総活躍」は,労働の質よりは労働の量の重視,政策による自治への介入,雇用形態より処遇の重視という特徴を有する。「一億総活躍」は現在進行中であるゆえ,その本格的な評価はできない。しかし,「分配→生産性→成長」の道筋が不分明で,雇用形態については現状維持のきらいがあり,「同一労働同一賃金」の場合も部分的な進展はあるものの明白な限界を有している。したがって,これから多数の活躍を真に促すためには,身分差を撤廃し,「シングル・ステータス」を実現する必要がある。

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