社会政策
Online ISSN : 2433-2984
Print ISSN : 1883-1850
特集 仕事の世界における権力関係とハラスメント
パワーハラスメントを生み出す組織風土
野村 正實
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 13 巻 1 号 p. 35-45

詳細
抄録

 2000年代初めに「パワーハラスメント」という日本語が案出されて以来,「パワハラ」が雇用にかかわる深刻な問題だと認識されはじめた。そして2019年労働施策総合推進法はパワハラについて「雇用管理上必要な措置」を講じるよう事業主に義務づけた。しかし同法はパワハラ防止と被害補償にとって十分といえるものではない。現在,労働法学者や法律実務者さらには産業医によってパワハラの予防と対策が活発に議論されている。しかし,他の社会科学分野からのパワハラ研究はほとんど見られない。このような状況は「パワハラ」概念に起因しているとはいえ,好ましいものではない。日本でパワハラといわれてものは,日本的雇用慣行と表裏一体となっている組織風土と密接に関連している。本稿では日本的雇用慣行・組織風土がどのようなメカニズムで権力によるハラスメントを生みだすのか,試論的に論じる。

著者関連情報
© 2021 社会政策学会
前の記事 次の記事
feedback
Top