2021 年 13 巻 2 号 p. 21-33
(株)クレディセゾンは,2017年9月,「全社員共通人事制度」を導入した。従来の「総合職社員」「専門職社員」「メイト社員」という雇用区分をなくす,画期的な人事制度改革を断行したのである。本論文では,全社員共通人事制度の実態をふまえたうえで,雇用区分を廃止するという人事戦略がなぜ可能となり,現にどのような課題を抱えているのかを,制度改革の背景・要因・効果に沿って,特に労使による新たな規範の受容に留意しながら検討する。まず,背景においては,主にビジネス環境の変化とビジネス利益構造の変化を分析する。次に,要因においては,新たな規範を育む経験がどのように蓄積されてきたのかを中心に分析する。最後に効果においては,従業員から出された反応を中心に分析する。以上に基づき,「雇用区分廃止」が持つ意味と,それがどのような課題を抱えているかを考察する。