生命保険産業では,近年,非正社員の正社員化が大規模にすすめられている。また,一般職の総合職化といった雇用管理区分の統合も行われている。本研究は,伝統的生命保険会社の雇用管理区分統合をめぐる事例から,人事制度変更の実態とその背景と論理,内実の変化,女性労働へのインパクトについて検討した。
その結果,先行研究ではコースを分けて人材育成することが効率的であると主張されてきたが,雇用管理区分で期待される役割を事前に固定化することは,効率的であるどころか,組織・育成上の課題となっていることが明らかとなった。雇用管理区分は,実際に担う業務にかかわらず,女性に対して社内で「期待される役割」を補助的なものと固定化してきたのに対して,雇用管理区分統合は「能力を発揮する主体」として女性を位置づけなおし,女性の「意思」に能力発揮を働きかける新しいタイプの女性活用策といえる。