2022 年 13 巻 3 号 p. 128-138
本研究は,妊娠・出産の高年齢化の挙児希望への影響を検討するため,不妊治療との関連を中心に分析をした。健康や医療の分析では,内生性が生じると考えられるため,内生性を考慮した計量モデルを用いて挙児希望に対する不妊治療経験の影響を検討した。
推計結果から,第一に年齢の挙児希望への負の効果を確認した。高年齢妊娠群の女性において,加齢により挙児希望の意欲が減退していた。夫である男性側の年齢については,夫の年齢が高くなるほど,妻側は2人目以降を持つことを諦める傾向が見られた。妻の年齢だけではなく,夫の年齢も次の子どもを持つ家族形成において重要であることが明らかとなった。第二に,不妊治療経験の挙児希望に与える負の影響を確認した。不妊治療経験者は強い医療費負担感があり,さらに不妊治療経験者は仕事をしていない状況にあることが分かった。妻の年齢にもよるが,総じて不妊治療経験は挙児希望へ負の影響があった。