2022 年 13 巻 3 号 p. 139-149
本稿では,社会福祉制度に位置づけられる「相談」について,民間委託がなぜ進められ,どのような影響をもたらしたのかを,史料を用いた政策過程の研究によって分析する。事例として,地域包括支援センターと在宅介護支援センターを取り上げ,この民間委託の政策過程と影響を明らかにする。
本研究からは,在宅介護支援センターにおける民間委託が,「相談」の硬直化の解消を目的に導入されたこと,また民間委託の範囲は行政の前線における「判定」に限定されていたことがまず示めされる。他方で地域包括支援センターの民間委託では,介護保険法と紐付けられたことにより「相談」の全面的な民間委託が可能とされたことを指摘する。そしてその結果として,行政は委託先に対する「管理」の側面が強化され,当初目指された「相談」の硬直性解消がかえって困難になっているという逆説的状況を明らかにする。