本稿は、イギリス港湾産業における1960年代後半以降の統制・統合構造の変化とその歴史的な意義を検討する。第二次世界大戦後には産業別労使関係を通じて労働者を統制・統合する構造が形成されており、そのもとで企業や労働組合から自律的な労働者による非公式の運動が発展していた。1960年代後半以降には、コンテナ化による労働過程の変化やデブリン改革と呼ばれる雇用関係の変化などによって、企業別の統制・統合構造に転換するが、それに伴い労働者や使用者の性格は変化し、労働者の企業・労働組合からの自律性は失われていく。1989年には労働者の雇用・所得を規制していた全国港湾労働スキームが新自由主義改革の一環として廃止されるが、60年代後半以降の変化は、企業の力を強化し労働者の力・自律性を解体することによって、このような規制緩和を容易ないしは可能にする歴史的前提条件であった。