2024 年 16 巻 1 号 p. 302-313
近年、プラットフォーム労働の不安定就労の問題が国際的な課題になっている。しかし、日本ではこれらの研究が殆ど行われていない。本論文では、フードデリバリー配達員の報酬設定とそこで生じている問題について、配達員が報酬額を概ね予測できる企業と困難な企業の比較分析によって明らかにした。その結果は以下の通りである。第一に、B社の配達員は報酬の決定方法について会社から十分な情報を与えられておらず、報酬額を予測することが困難であったので、不満を抱き、報酬制度に不安定さが生じていた。第二に、報酬設定における一方的な変更は、配達員が報酬額を概ね予測できる企業と困難な企業の双方の配達員が懸念に感じていた。第三に、量的調査の結果、B社は報酬の決定方法を配達員に十分に伝えていないので、配達員が不満に感じていることが確認された。更に、上記の報酬設定の問題が配達員の意識と行動にどのように影響しているのかを考察した。