2026 年 17 巻 3 号 p. 39-50
本稿は、日本の賃金構造基本統計調査を用いて、残業時間に対する賃金プレミアムとその経年変化を分析し、男女賃金格差との関連を検討する。分析の結果、残業時間が長いほど時間当たり賃金が高い傾向があり、その賃金プレミアムは近年上昇している。この理由として、①残業時間が長い仕事は引継コストが高いため長時間労働の価値が高い、②観察されていない変数(例えば、仕事に対する意欲)が残業時間と正に相関している、③上司や顧客は仕事のできる人に仕事を頼むため時間当たり賃金が高い人に仕事が集中し長時間残業になることが考えられる。男性に比較して女性の方が残業時間に対する賃金プレミアムは高いが、その男女差は年々縮小傾向にある。男女賃金格差自体も縮小しているが、同じ職場内の女性の賃金は男性より依然として低い。本研究は、長時間労働を評価する職場文化や男女の職場分離が、賃金格差を形成する重要な要因であることを示している。