抄録
【はじめに】公的介護保険制度の利用決定権は、言うまでもなく本人に委ねられるのであるが、対象者が痴呆性老人の場合では、その力が発揮されにくく多くの問題が生じている。前回我々はこれらの点に着目し、介護保険制度における痴呆度の判定とその決定要因との関係の調査を行った。今回は症例数を大幅に増やして調査を行い、新たな知見を得たので報告する。【対象と方法】対象は、介護保険を申請したことがある高齢者4305名(男性1316名:30%、女性2989名:70%)で、平均年齢は82.1±14.8(男性80.4±20.1、女性82.9±7.1)歳であった。それらに対し、申請時の痴呆老人の生活自立度および認定調査票の第6群と第7群の点数を調査し、それぞれを解析した。解析はSPSS Ver11.0を使用し、有意確率は0.01とした。【結果】(1)単回帰分析…痴呆度を基準変数、第6・7群を説明変数としそれぞれ単回帰分析を行った。前回の結果は第6群の決定係数0.69、標準偏回帰係数0.83であり今回の総合計では第6群の決定係数0.73、標準偏回帰係数0.85で各々有意であった。次に第7群では前回は決定係数0.25、標準偏回帰係数0.50、今回の総合計では第6群の決定係数0.24、標準偏回帰係数0.50で各々有意であった。回帰直線として、前回は第6群で弱い適合性、第7群では適合性が悪い、今回は第6群で強い適合性、第7群では前回と同じく適合性が悪いという結果が現れたが、相関関係、回帰式はともに有意確率が出現、予測に役立つという結果が得られた。(2)重回帰分析…痴呆度を基準変数、第6・第7群を説明変数とし重回帰分析を行った。前回の結果決定係数は0.76、標準偏回帰係数は第6群が0.75、第7群が0.30であり、今回の決定係数は0.79で、標準偏回帰係数は第6群が0.77、第7群が0.28でありそれぞれ有意であった。従って、前回今回ともに重回帰直線の適合性もよく、重回帰式、第6・7群の変数もともに有意確率が出現、予測に役立つという結果が得られた。【考察】介護保険における基本調査では第6群は意志の疎通や見当識、第7群では問題行動を計っているが、前回と同様本来介護する上で最も重要である項目の第7群においては、単独では適合性に関して難しいという結果が現れた。症例数を増大させても同様の結果が現れるということは、これだけの時間や経験を費やしても未だ痴呆に関する統一見解が見られないことが最大の原因ではないかと考える。しかし介護度の判定においては両群を総合的に分析しており、今回の結果からも第6・7群をみた場合では非常に良い適合性が現れている。従ってその判定は若干の調整が必要であるが信頼できること再認識された。しかしその調査における評価の信頼性や専門性等の付随する要件も同時に求められてくることが示唆された。