社会政策
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諸外国における自治体評価 : イギリスの業績測定を例に(<小特集2>ポスト福祉国家における政策評価-行政運営との関わりで)
長澤 紀美子
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2013 年 5 巻 2 号 p. 156-162

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抄録

OECD諸国の自治体レベルで一般的な業績測定は,日本の行政評価と異なり,中央政府からの規制の側面やインセンティブ構造をもつのが特徴である。とりわけイギリスは集権的な統制による業績測定の「垂直的」モデルである。「ニューレイバー」政権下の10年において,社会的ケアの業績指標PAFは,中央政府による自治体間競争の促進と懲罰的側面から,自治体の業績管理の支援,さらに「ランキング」や「格付け」でなく「判断」へ,定性的な記述による定量的指標の欠陥の補完へ,などの柔軟化がみられた。また住民や医療専門職との協働により,地域の自律的な業績管理を推進したことは評価の分権化ともいえる。しかし,PAFによる業績測定は,政権交代に伴い2010年に廃止された。この背景に業績測定の元来もつ逆機能,分権化と矛盾する集権的な一律の規制の限界,社会福祉のようなアウトカム評価が難しい領域に定量的な評価を導入する際の問題があると考えられる。

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© 2013 社会政策学会
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