社会政策
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小特集2■子育て支援労働と女性のエンパワメント
子育て支援者の生活状況と制度化
―経験と専門のはざまで―
近本 聡子
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2016 年 8 巻 2 号 p. 68-80

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抄録

 日本における地域子育て支援拠点制度(事業)策定の発端となった地域の人々(子育て支援者)の活動は2000年前後から各地に自発的(草の根の市民活動)にみられるようになり,2000年施行のNPO法制定後は,行政との連携をしながら地域の子育て支援を現場で実現し推進する団体が急速に設立された。筆者たちの研究プロジェクトでは,これらの非営利・協同組織(サードセクター)で働く「子育て支援労働」とそれに携わる子育て支援者についての実態調査を2013年に実施し,どのような人々が地域で子育て支援をするために集まり,どのような働き方をしているのかを明らかにしようと全国で43のひろば事業(当時)の拠点運営団体(9割以上がサードセクター)を対象として質問紙調査を行った。これと並行して団体の組織概要についての聞き取り調査を実施し,人・モノ・お金の動きを表す資料を収集した。2012年における「ひろば型」事業の拠点数は全国で2026か所である⑴。 この論考では,子ども子育て支援新制度の発足前夜の子育て支援者,子育て支援労働の実態を紹介し,保育士資格などをもちながら家族内のアンペイドワーク(多くは自分の子育て)に特化していた女性たち(調査でも95%が女性)が,地域子育て支援を通して,地域の資源を形成し,経済的,社会的エンパワメントがなされている状況をみる。

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