2017 年 8 巻 3 号 p. 47-61
公共サービスの担い手が「多様化」している。しかしながらその多様化は,雇用の非正規化であり,ワーキングプア化ではないか。自治体に雇われて働く臨時・非常勤職員(非正規公務員)と,自治体が発注する仕事(委託事業,指定管理者制度,公共事業)で働く労働者(公共民間労働者)を対象に行ってきた調査結果に基づきながら,本稿ではそのことを論じている。労使が対等の雇用関係と異なり,公務員は,公法上の任用関係の下にあるとされる。しかし正規の公務員と異なり,非正規公務員には法制度上の保護も代償措置もない。彼らは正規の公務員とも民間の非正規労働者とも異なる,法の狭間の存在である。公共民間労働者の雇用,労働条件は,直接の使用者はもちろんのこと,発注者である自治体の発注条件に強く制約を受ける。価格を重視した入札制度や事業者の選定が問題を深刻化させている。自治体の存在意義にも反するような,かかる官製のワーキングプア問題の解決が急がれる。