本稿では,戦後直後期の1950年に三菱電機において職階制が導入されたプロセスを詳細に検討し,それを通して同社における職務重視型人事労務管理の萌芽がどのように生み出されたのかを考察した。本稿の考察から明らかになったのは,以下の3点である。第一に,戦前の出来高給との接続が容易であったこと,第二に,三菱電機は職階制を導入する際,労働組合と組合員の抵抗を考慮して,制度の修正・工夫を行ったこと,第三に,労働組合は必ずしも職階制に否定的ではなかったこと,である。三菱電機が1950年に導入した職階制のもとでの職階給は,賃金に占める比率が低く,査定により上下変動するものであったが,とにもかくにも職務評価による職務価値序列に基づく人事処遇制度を確立した。このことを,本稿では,三菱電機における職務重視型人事労務管理の萌芽と位置付ける。この萌芽は,その後の同社における人事制度の展開の中で花開いていくことになる。