社会政策
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大河内理論の晩年の転回と社会保障制度審議会
小野 太一
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2017 年 9 巻 2 号 p. 123-134

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抄録

 大河内一男は晩年,所謂「大河内理論」に基づく社会政策を「縦」「消費」「横」に広げることで「総合社会政策」へと転回させた。その際,社会政策と社会保障,公的扶助,社会福祉等を「働く」ことを鍵に総合化したが,背景には個人の自立と自己責任,その表象としての「働く」ことこそ人間存在の根幹であるという価値観が一貫してあった。彼は同時期に会長を務めていた社会保障制度審議会において総合勧告をまとめる機会はなかったが,逝去後の80年代半ば以降は,彼の視点に引き付ければ「労働力の保全・培養」に係る旧来的社会政策と社会保障に係る施策を「総合社会政策」の下で一体的に進める有効性が高まった。雇用及び社会保障政策の今日的な課題を総合的に検討する上で,「総合社会政策」への転回やその背景にある人間観や発想は有意義であり,また大河内,及びその後の隅谷三喜男時代の制度審の評価やそれ以降の取組の分析は有効な作業である。

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© 2017 社会政策学会
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