本稿の目的は,福祉における「情報の壁」,すなわち,知らされないことによる制度へのアクセス障害の実態と原因を一自治体の事例調査によって探索的に解明することである。調査対象は介護福祉及び児童福祉に関する自治体広報で,自治体職員への書面調査及び面接調査並びに自治体ホームページ調査により,住民ニーズが大きいのに自治体ホームページで容易には見つけられない福祉情報が多いこと,自治体職員は広報内容の不十分さではなく広報媒体の不十分さを問題視する傾向にあること等が分かった。その原因は,住民の情報ニーズと広報実態とのギャップを組織的にチェックし改善する仕組みがないこと,及び,担当職員の認知バイアスゆえに現状維持が優先されたり手段の目的化が生じてしまうことにある可能性が示唆された。当該ギャップの自覚を促し,広報内容を系統的に改善するための組織体制を構築することが必要だと考えられる。