2018 年 9 巻 3 号 p. 89-101
本稿の目的は,裁量労働制の導入・運用に,労働組合がどのように関与しているのかを明らかにすることで,労使関係による労働時間規制の実態,および可能性を探ることにある。 裁量労働制については,各種調査によって,当該制度の導入が労働時間の延長をもたらしていることが指摘されている。だが,その運用にあたって,労働組合がどれほど関与し,規制力を発揮しているのかについては,これまでほとんど解明されていない。 本稿では,当該制度を導入している企業の労働組合を対象としたインタビュー調査を通じて,長時間労働の実態が確認された場合に,制度適用の可否を判断するという運用がなされていることが明らかとなった。より具体的には,制度適用を受ける対象者の選定や適否に労働組合が関与しており,制度導入後,労使協定で定めたみなし時間と実労働時間との間に大幅な乖離が見られる場合には,当該労働者を制度適用から除外する手続きがなされていた。