2018 年 9 巻 3 号 p. 102-115
近年,新興のサービス産業を中心に,周辺的正社員(その使用者はブラック企業などと呼称される)をはじめとする新たな労働者類型が登場してきた。彼らの雇用は不安定且つ低処遇であり,社会問題として指摘されている。だが,従来型の企業別労働組合は当該企業の社員以外を組織対象としないため,こうした問題に対応できない。 一方,2010年代には,ブラック企業で働く若者を組織するための個人加盟ユニオンを結成する動きが現れた。このブラック企業対抗ユニオンは,業種・職種という結集軸を重視する点で,これまでの個人加盟ユニオンとは区別される。 本報告では,こうした新たなタイプの個人加盟ユニオンが,どのような要因や経緯で結成されたのかを明らかにし,その組織形態や組合機能における特徴を提示する。これによって,周辺的正社員という新たな労働者類型に対応した労働組合の組織形態や組合機能について考察することができると考える。