抄録
本稿は, 数百名の大規模プロジェクトの課題解決に向けて組織的なソフトウェアプロセス改善活動として, 社内アセスメントから標準を守る仕組み作りや定量的データに基づくプロジェクト管理手法の導入や開発プロセスの改善により成果を獲得してきた事例報告である. プロジェクトマネジメントの研究では, プロセス中心の施策としてカーネギーメロン大学ソフトウェア工学研究所(SEI)で開発されたソフトウェアプロセス改善の枠組みであるCMM (Capatal Maturity Model)に基づき改善活動を実施し, 品質・生産性を向上させる組織的基盤を整備してきた. 具体的にはプロジェクトの現状分析、改善目標や計測項目の設定および開発プロセスの定義・可視化から経験者による最適化を行い, 実際の運用から定量的なデータに基づいたプロジェクト管理手法の導入とソフトウェア開発・管理支援環境の整備という2つの観点から取組みを行った. その改善成果として、お客様への提供機能単位毎に開発プロセスで定義された作業指示・変更要求の状態, その成果物の作成の状態, レビューによる品質の作り込みや手戻りの計測等により, 動的に変化するプロジェクト全体の可視性の向上やタイムリーなアクションに結び付ける面で効果が得られた. 今後のより抜本的な改善への足がかりとする上での課題について考察する.